自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

「幽婚」1998年、日本

ブロ友さんに紹介されたテレビドラマをYouTubeで鑑賞

山本恵三監督、脚本市川森一 70分

岩淵孝行は、背中に刺青のある元ヤクザだが、今は霊柩運送会社の運転手として真面目に働いていた。

ある日、修という男が急死した婚約者・佐和の遺体を、故郷の四国・黒髪村まで移送するよう依頼してきた。だが、修は移送の途中で姿を消してしまう。

岩淵は遺体に向かって「大丈夫、必ず送り届けますから」と言う。村は吊り橋を渡った電話もない所だった。

 

黒髪村では若い女性が結婚の契を結んだまま死んだ時、生前の婚約者との祝言を挙げてから葬送する「幽婚」のしきたりがあり、独身の岩淵は修の代わりに新郎役を頼まれる。死者、佐和との祝言があげられる。

霧の中から現れる吊り橋が彼岸と此岸の境界だった。奇妙な不思議感があふれ、映画「雨月物語」を思わせる幻想的な雰囲気があった。

しかし映画の底に流れているのは軽いユーモアだった。現実に戻った岩淵の結婚式での新婦が「佐和」で、この結末は予想できたが、それでも感動的だった。いい余韻の残る作品だった。

 

平成10年度文化庁芸術祭優秀賞受賞。モンテカルロ国際TVフェスティバル銀賞受賞。第25回放送文化基金賞受賞。1999年日本民間放送連盟賞優秀賞受賞。第36回ギャラクシー選奨受賞