背景がブルーで統一された映像は秀逸
オーストリア、ルクセンブルク、ステファン・ルツォビッキー監督 99分
1920年頃、第一次世界大戦後、ロシアの捕虜収容所からウィーンに帰還したペーターは元敏腕捜査官だった。戦争に敗れた祖国は変わり果てていた。
皇帝は逃げ出し、祖国は共和国になっていた。闘った兵士たちはすべてを失ったのだ。
ペーターが家に帰っても妻や娘の姿はなかった。街には昔のような華やかさはなく、ただ悲惨な暮らしが続いていた。
そしてペーターの仲間だった帰還兵が残虐な拷問で殺されていた。やがて仲間だった帰還兵たちが次々と殺されてゆく。
19本の指が切断され、19本の杭が身体に打ち込まれていた。19は何を意味するのだろう。猟奇殺人事件の裏には捕虜収容所でのある出来事が関わっていた。
ペーターはそのことに気づく。
奇妙な雰囲気を醸しだす歪んだウィーンの町並は敗戦で行き場のなくなった帰還兵たちの心的風景だった。
ブルーバックで撮られた映像はかつてのドイツ表現主義の映画ようで不安を掻き立てた。
ミステリーやサスペンスの雰囲気はあるが、むしろ戦争の傷跡を描いた重厚な作品と言えるだろう。