自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

ペンタゴン・ペーパーズ

2017年、アメリカ、スティーブン・スピルバーグ監督

1971年、ベトナム戦争が泥沼化していたアメリカ。国防省の機密文書ペンタゴン・ペーパーズの存在をニューヨーク・タイムズがスクープした。ライバル紙であるワシントン・ポストの編集主幹ベン・ブラッドリーはその文書を入手して報道しようとする。

しかしニクソン大統領たちはあらゆる手段で記事を差し止め、国家の安全を脅かすと連邦裁判所に訴えを起こそうとする。自殺した夫の後を引き継ぎ、ポスト紙の社主となったキャサリン・グラハムに大きな決断が迫られる。

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報道の自由を守るために戦う物語であり、スピーディでサスペンスフルなエンターテイメント作品だった。そしてもう一つ、70年代の女性の社会進出がテーマとなり、キャサリンの苦悩と成長が描かれる。彼女は女性というだけで男たちから軽く見られており、男ばかりの殺伐とした会議でも孤立していた。

しかし悩みながらもキャサリンは男性にはできない勇気ある決断をする。裁判が終わりキャサリンは裁判所の階段を下りてくる。その周りに多くの女性が集まってくる。そこには女性たちの称賛と憧れのまなざしがあった。女性たちが自立して社会に飛び出す時代がやってきた。

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おそらく70年代は多くのものが開かれていく時代だったのだろう。それに対して2020年代はどのような時代になるのか。

この映画ではアメリカが独立して間もない1791年に権利章典で採択された憲法修正第1条(言論の自由)が新聞社の論拠となり、映画「女神の見えざる手」では修正第2条(武器の保有権)が銃擁護派団体の論拠となっている。建国当時の法律が今なお生きているのは一つの驚きだ。