自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

ある愛の風景 2004年

戦争による心的外傷は癒せない

デンマークスサンネ・ビア監督

 ミカエル少佐は妻サラと可愛い娘二人と幸せな日々を送っていた。刑務所に入っていた弟ヤニックが出所してくる。アフガニスタンへの派兵を命じられていたミカエルは、その夜、出発する。

しばらくしてミカエルの死亡が家族のもとに知らされる。弟のヤニックがサラや娘たちの力になるが、いつしかサラとヤニックはお互いに好意を持つようになる。ところがミカエルは捕虜になっていただけで、イギリス軍によって救出される。しかし帰還してきたミカエルは別人のようになっていた。

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一体何があったのか。サラは夫に「話してちょうだい、何があったの」「お前の傍にいるために取り返しのつかない罪を犯した」

捕虜生活から戻ってきたミカエルは平和で豊かで笑いのある生活に苛立ちを感じる。なによりも生きている自分が許せなかった。

やがて覚悟をきめて彼はある家族を訪ねる。そこには若い妻と笑顔の赤ん坊がいた。

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家族に暴力をふるい逮捕され、刑務所に送られたミカエル。サラは面会に行く。そして「話してくれない?」「できない」「言わないのなら、もう来ないわ、二度と」

ミカエルはサラの胸に顔を伏せ、泣きながら、同じ捕虜だった無線兵の家族のことを話す・・「息子がいたんだ、まだ赤ん坊だった」

 

 優等生のミカエルが初めて経験した地獄を独特の映像で表現したデンマークの女性監督スサンネ・ビアの傑作。

 2009年にハリウッドで「マイ・ブラザー」としてリメイクされた。