死んでからも戦死者たちは利用される
フランス。アルベール・デュポンテル監督 原作ピエール・ルメートル
1920年、モロッコ、取調室で憲兵の尋問をうける中年男アルベール、彼は友人エドゥアールとの「協力関係」について供述してゆく。
1918年、第一次世界大戦の西部戦線、ドイツとの休戦命令が出ていたのにもかかわらず、「戦争の好きな」プラデル中尉は味方の偵察兵を殺し、それをドイツの仕業とみせかけて兵士たちを突撃させる。
その事実を知ったアルベールはプラデル中尉に撃たれ、穴に落ちて生き埋めになるが、それをエドゥアールが救った。しかしそのためにエドゥアールは顔の下半分を失ってしまう。
二人はパリに戻り、戦争記念碑建立の機運が高まっていることを知り、戦争を起こした国と卑劣なプラデル中尉への復讐を企てる。
原作はデュマの「モンテ・クリスト伯」やユゴーの「レ・ミゼラブル」など波乱万丈、奇想天外なフランス小説の面白さを受け継いでいた。そして原作の面白さはそのまま映画の面白さにつながっていた。
戦後混乱期の大富豪の邸宅や貧しい人々の暮らし、戦争による経済的な損失は莫大なものだった。20年代のパリの風景や傷を隠すためのエドゥアールのアート感覚の仮面などが、この映画をファンタジック、しかもノスタルジックなものにしていた。
陰惨な復讐劇ではなく、エドゥアールの数奇な運命と大富豪の父親との確執に狙いを定めた面白い映画だった。
ちなみに原作には続編ともいうべき「炎の色」があり、これはプラデル中尉と離婚したエドゥアールの姉マドレーヌが主人公だった。