唇の動きを読む
フランス、ジャック・オーディアール監督
補聴器がはなせない聴覚障害者の35歳の女性カルラはやりがいのない仕事に追われていた。カルラは美人でもなく男友達もなく、寂しい日々を送っていた。
彼女の助手として仮釈放中の青年ポールが雇われる。カルラは野生的な雰囲気をもったポールに惹かれてゆく。
仕事上の不満から、カルラは同僚の書類をポールに盗ませ、気に食わなかったその同僚を失脚させるのだった。また難癖をつける取引先の男をポールに襲わせて怪我をさせる。取引先の男はおとなしくなり、仕事は順調にすすむ。カルラにとってその経験は快感だった。
カルラはポールに会った日から自分のなかの女に目覚め、徐々に変貌してゆく。ポールのシャツの匂いを嗅ぎ、身にまとう。パーティでは恋人のふりをしてポールを女友達に紹介する。
やがてポールは大金の強奪を計画し、読唇術ができるカルラを引き込んでゆく。隣のビルの屋上からボスの部屋を双眼鏡で覗き、強盗犯たちの会話を唇の動きで読み取るのだった。
しかし大金が盗まれたことに気づいたボスはポールを殴り、監禁する。
最後にカルラが手にしたのは今まで縁のなかった「男と金」だった。そしてそこに「愛」が生まれた。サスペンスタッチで爽快な「女のフィルム・ノワール」だった。