自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

オートクチュール 2021年

フランスのお針子と移民

フランス、シルビー・オハヨン監督

パリ、モンテーニュ通り、ディオールオートクチュール部門のアトリエ責任者でお針子のエステルは次のショーを最後に引退することになっていた。彼女は地下鉄でバッグを盗まれる。

 

犯人である移民2世の娘ジャドの滑らかな指を見たエステルは彼女には裁縫の才能があると見抜き、お針子の見習いとしてアトリエに迎え入れる。エステルはジャドを見ていると、疎遠になっている娘を思い出した。

しかしジャドは自分がどれだけのチャンスに恵まれたのか分からない。だから反発し、二人は何度も衝突を繰り返す。

 

ジャドに「人生を楽しんでいるの」と訊かれたエステルは「私は人生が好きだ、でも人生が私を嫌っている」という。エステルは仕事だけに生きてきた事を後悔していた。

荒んだ生活を送っていたジャドはアトリエでのお針子の裁縫を見て「こんなにも美しい仕事があるのか」と思っただろう。「美しいものをつくる、好きなものをつくる」お針子の仕事に惹きつけられ、やがてジャドは裁縫の技術を学んでゆく。

 

いかにもフランス映画らしい上品な作品だった。何といってもドレスを作ってゆくアトリエのシーンがいい。

優雅な物語の中にも移民や貧富の差が描かれ、厳しい現実が伝わってきた。