フェリーニに恋して
1993年、オハイオ州リミニ、20歳のルーシーは母クレアに大切に育てられ、二人で映画三昧の世間離れした暮らしだった。ルーシーはキスをしたこともなく、働いたこともなく、友人もいなかった。
ある日、母が難病だと知り、ルーシーは自分には何かが必要だと思う。自立しようと面接にいくがうまくいかなかった。傷心のルールーは何かに導かれるように劇場に入ってゆくとそこではフェリーニ監督の「道」が上映されていた。
ルーシーは「道」の純真無垢なジェルソミーナに自分を重ね合わせる。「すべてのものに存在の意味がある、この小石にだって」という「道」のセリフがルーシーの心を揺さぶる。
アメリカ映画とはまったく違うヨーロッパ映画に震えるほど感動して涙をながす。どうしてもフェリーニ監督に会いたくてイタリアに向かう。やがてフェリーニ監督のメッセージがルーシーに伝えられる。「大切な何かは近くに存在する。人は遠くに行かないとその大切なものに気づかない」
映画は「道」「甘い生活」「81/2」などへのオマージュシーンがふんだんにとりいれられ、現実と幻想が入り組んだストーリー展開だった。「現実は夢のなかにある。夢想家だけが唯一のリアリスト」というフェリーニの言葉そのものだった。
ルーシーはヴェローナ、ヴェネチア、そしてローマという美しい町を訪ね、いろいろな人に出会い、つらい経験をし、初めて恋もする。それがルーシーの「道」だった。