幕間コントのおもしろさ
日本 斎藤工監督
焼き場の焼却炉から物語は始まる。高熱の炎で遺体は燃やされる。
ギャンブル好きで多額の借金をかかえた父親が突然失踪した。残された妻と二人の息子は貧しい生活ながら3人で力をあわせて生きてゆく。
13年後、父親の消息が分かった。胃がんで入院して余命3か月だという。3か月後、父親が亡くなり、葬儀が執り行われる。
家族を捨てた愚かな父親にも隠されたいい面があった、という家族の情愛物語だったが、私には合わない映画だった。
ところがこの映画にはテイストのまったく違うシーンがあり、もうそれだけで満足した。それは葬儀会場に父親の知り合いの人々が現れ、次々と思い出を語るシーンだ。
現れたのは麻雀仲間、パチンコ店での同僚、奇術師、同じ病室だった患者、バーの若い女、ひげ面のオカマ、やくざ風の男、ペテン師に数珠を買わされた男・・誰もがどこか調子はずれで社会の落ちこぼれのようだった。
彼らはまるで落語の世界から抜け出したような奇妙な人たちで、思い出を語り始める。葬儀会場がどこか異空間のようだ。その中に13年間の父親の姿が浮かび上がってくる。
アドリブかもしれないが、役者たちの演技もじつに自然で見事だった。
もしかしたらこの映画は喜劇で、成功者も落伍者も「燃やしてしまえば残るのは骨と灰だけ」と人生を笑い飛ばすのが本当の狙いかもしれないと思ったぐらいだ。
ある人は喜劇のように生き、またある人は悲劇のように生きる、同じような人生なのに。