自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

ヒトラーに盗られたうさぎ 2019年

明るい亡命生活

ドイツ、カロリーヌ・リンク監督

原作はドイツの絵本作家ジュディス・カーの自伝的小説「ヒトラーにぬすまれたももいろうさぎ」

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1933年2月、ベルリン、演劇批評家の父、音楽家の母、そして兄と暮らす9歳のアンナ、ユダヤ人の父はラジオや新聞でヒトラー批判を続けていた。ヒトラーが政権を取ると迫害されると思い、急遽、家族はスイスに亡命する。

やがてナチスが政権を掌握すると「ドイツ人は理性を失った」と父は家族を連れてスイスからパリへと亡命を続ける。ヒトラーは父に懸賞金をかけて捕えようとしていた。

 

(笑うかもしれないが、映画「帰ってきたヒトラー」でヒトラー役だった俳優がこの映画では父親役だった)

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スイスの田舎や華やかなパリの暮らしもどこか旅行気分でアンヌは楽しそうだった。それほどドラマティックでもなく、危機感もあまりなかった。ユダヤ人迫害の辛い物語ではないが、アンヌの目から見れば現実は案外、このようなものだったのかもしれない。

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パリではほとんど収入がなく生活は困窮する。ところがイギリスで仕事が見つかり、家族は1935年イギリスに渡る。でもアンナたちはまたその国の言葉や習慣を覚えなければならなかった。

 

船上からイギリスが見えてきた時、アンナは「英語は一言もわからないけどいいわ。すぐにわかるようになるから」アンナのこの楽観性が亡命生活を明るいものにしていだのかもしれない。

児童文学でも読んでいるような屈託のない作品だった。