自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

選ばなかったみち、2020年

認知症者の脳内の旅

アメリカ、イギリス、サリー・ポッター監督 86分

ニューヨーク、線路沿いの乱雑としたアパート、一人で暮らすメキシコ移民の作家レオ、彼は前頭葉の委縮による認知症で一人では暮らしていくことができなかった。

モリーとヘルパーが彼の面倒を見ていた。

ある朝、モリーがやってきてレオを病院に連れていく。しかし彼は幻想の世界で生き、現実の世界では何がおこっているのか全く分からなかった。

 

レオは脳の中で初恋の女性と暮らしたメキシコ、作家活動が行き詰っていたギリシアと過去への旅をしていた。夜になると裸足で徘徊して行方不明になってしまう。

モリーには父レオの脳の中で起きていることがまったく理解できなかった。たまらなくなってモリーは「何が見えているの」と訊くが、レオは答えることができなかった。

 

しかし私たちはラストシーンに驚愕し茫然とする。ある朝、モリーは部屋を去ってゆくもう一人の自分の姿を見たのだ。

これは幻想なのだろうか、それともモリーは父レオの見ている世界が見えるようになっていたのだろうか。