父親の幻影と旅をする
日本、熊切和嘉監督、113分
東京で一人暮らしをするフリーターの陽子は42歳で、部屋に閉じこもって、自堕落な日々をおくっていた。従兄の茂が父親の訃報を伝えに来る。父親とは20年も疎遠になっていた。
茂やその家族と車で青森に向かうが、サービスエリアでトラブルが起こり、離れ離れになってしまう。所持金の少ない陽子は仕方なくヒッチハイクで青森に向かう。
しかし陽子は普段から引きこもりがちで他人と会話をするのが苦手だった。せっかく車に乗せてくれても、口数は少なく愛想もなかった。それでも途中で出会う様々な人々との交流で彼女は徐々に変わってゆく。
時々、若き日の父親の幻影が現れ、陽子はその幻影と一緒に青森に向かう。陽子の心の中では父親への愛憎が微妙に入り混じっていた。
ヒッチハイクは彼女が過去を振り返るきっかけとなった。やがて陽子はある車に乗った時、突然、自分の人生を饒舌に告白する。そして「自分には何もない、努力しないで逃げてきた」と陽子は話す。
亡くなった父と和解できなかったことを「もう取り返しがつかなかった」と後悔しながらも彼女は明日に向かって生きてゆくだろう。