映画「Xエックス」の前日譚
アメリカ、タイ・ウェスト監督 102分
かつてのアメリカ映画黄金期のテクニカラーの牧歌的な情景から物語は始まる。
1918年、テキサス州、人里離れた農場で厳格な母親と全身マヒで車椅子の父親と暮らす若い女性パール。彼女の夫はヨーロッパ戦線に出征中だった。パールは映画の中のダンサーたちの華やかな姿に憧れて、外の世界に出ていくことを願っていた。
しかし母親からは一生、農場から出て行かせないと言われ、母親が死んでくれたらいいのにと思っていた。映画館でハンサムな映写技師と知り合い、スターになる夢を語り、一夜を共にする。
町を巡回するショーのオーディションを受ける。義妹は合格するが、パールは不合格になった。それはパールにとっては致命的な打撃だった。パールは母親、父親、映写技師、そして義妹を殺してしまう。
冒頭、パールがガチョウを殺し、平然と沼のワニに食わせるシーンやウモロコシ畑の案山子とダンスをするエロティックなシーンに彼女の異常性があらわれていた。彼女は病んでいた。
「世間の人は持っているのに、私には何かが欠けている」と彼女は言う。
無邪気な彼女には何をしでかすか分からない怖さがあった。パールの心の中に秘められた暗い狂気がおぞましい。エンドロール、パールの不気味な笑顔が永遠に続くようだった。
パール役のミア・ゴスの迫真の演技は怖いほど凄いものだった。