自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

世界最古の洞窟壁画

 

世界最古の洞窟壁画

2010年、アメリカ、フランス合作。ヴェルナー・ヘルツォーク監督

 1994年、南フランスのシューヴェ洞窟で世界最古の洞窟壁画が発見された。有名なラスコー洞窟の壁画は1万5千年前だが、シューヴェ洞窟壁画は3万2千年前のものだった。洞窟の入り口が崖崩れのためにふさがっていたので遠い過去からのタイムカプセルになっていた。

壁画は躍動的で動物たちの動きを絵画でとらえようとしている。壁面のために凹凸がありそれが三次元の世界を思わせた。

f:id:hnhisa24:20190422094317j:plain

 洞窟内に残された旧石器時代人の手形は、掌を壁にあてて口に含んだ染料を吹きかけたものだろう。3万2千年前の手形に自分の手を重ねたくなる。

f:id:hnhisa24:20190422094349j:plain

壁画だけではなくむしろそれを描いた旧石器時代人の暮らしや精神世界のほうに興味をそそられた。洞窟内にはさまざまな動物の骨が発見されているが、人類のものはなかった。おそらくここは生活の場というより特別な場所ではなかっただろうか。

寒冷期でドーバー海峡は凍っており、パリからロンドンまで歩いていけたという。彼らはどんな獲物をとり、どんな毛皮で、どんな暮らしをしていたのだろう。宗教は、埋葬は、家族は、音楽は、疫病は、希望は・・と想像が果てしなく広がっていく。

旧石器時代、このフランス、ドイツ地方にはネアンデルタール人も混在していたので争いがあったかもしれない。

ネアンデルタール人の知能は発達していたのにもかかわらず社会関係を築くことができず、宗教や芸術の精神世界を生み出すこともなく、やがて彼らは滅びていく。「知恵のあるもの」ではなく「霊魂をもつもの」が生き残った。それが現代の人類だった。