黒い眼帯の女
イギリス、アメリカ、マシュー・ハイネマン監督
「生きる伝説」といわれた実在の女性記者マリー・コルヴィンの半生を描いた作品。
マリーは2001年、スリランカ内戦で左目を失明し、PTSDに苦しみ、悪夢に悩まされる。それでも戦場の悲惨さを訴え続けて、紛争地を取材する。周囲の反対を押し切って果敢に戦場に乗り込んでゆくマリー。彼女は酒とタバコを断つことができない。
マリーの戦場からの報告を英国の公共放送全局がライブ中継をした。それは大きな反響をよんだ。その直後、2012年2月22日、マリーはシリアのホムスで爆撃のため死亡。
報道で現実を変えることができるのか、本当は何が起こっているのかを伝えなければ報道は失敗だ、どちらの勢力も曖昧にしているものを明らかにする、特ダネを追う人生だったが、普通の生活がいいとしてもそんな暮らし方をマリーは知らない。彼女は戦場と共に生きてきた。
「私が見る、だからあなたは見なくてもよい場所にいるのよ」マリーは私たちの眼となって残虐な死を見つめ、真実を訴え続けた。でも私たちはそれを見ただろうか。
視聴者にとって遠い出来事でもここでは目の前の出来事なのだ。犠牲になるのはいつも民間人で特に女と子供だった。
虐殺され荒れ地に埋められた民間人たちを掘り起こす、水と砂糖だけで生きる子供たち、幸せになっただろう少女は無残な死体に変わり果てた。マリーには世界が崩壊してゆくように思えた。
「♪私は何も怖れない 何ひとつ怖れない 何も私を止められない・・♪」