自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

ペトラは静かに対峙する 2018年

陽光がそそぐ乾いた大地のカタルーニャ

スペイン、フランス、デンマーク ハイメ・ロサレス監督

スペイン、カタルーニャ州、女性画家のペトラは著名な彫刻家ジャウメのもとにやってくる。作品制作のためという名目だったが、実はジャウメが自分の父親なのかどうかを確かめるためだった。

母は父の名前を明かさずに亡くなっていた。

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ところが偉大な芸術家と呼ばれるジャウメは他人の不幸や痛みを喜びとする冷酷で邪悪な男だった。ジャウメの卑劣な行為のため善良な家政婦テレサが自殺した。

真実を知ったジャウメの息子で写真家のルカスは家を出てゆく。そして悲劇の連鎖が続いてゆく。

 

映画は突然、第2章から始まる。いくつかの時系列をシャッフルさせているので結果が先になり、原因が後になる。観客は戸惑いながらも時系列を整えてゆく。そのためなのか迷宮に入り込んだような不思議な感覚に襲われる。

映画の中ではゆったりとしたパンが何度も使われる。何が見えてくるのだろうかとカメラの動いた先を見つめる。緊張感とともにそこに死体が見えてくる。

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原題は「ペトラ」なのに、なぜ邦題は「ペトラは静かに対峙する」なのか。「対峙」には「対立する、向き合う」といったような意味がある。

ではペトラが対峙したものとは一体何だったのだろう。それは「悲劇」だったような気がする。彼女は静かに悲劇に向き合ったのではないだろうか。

人生の残酷さに立ち向かい屈することがなかった。だからこそ私たちは最後に一筋の光を見ることができた。