自由に気ままにシネマライフ

映画に関する短いエッセイとその他

2020-01-01から1年間の記事一覧

飢餓海峡 1964年

戻る道ないぞ、帰る道ないぞ 日本 内田吐夢監督 183分 原作水上勉 昭和22年、北海道の町で質屋一家が惨殺され、大金が盗まれ、放火された。犯人は網走刑務所から出所してきた2人の男だったが、犬飼はたまたま知り合ったその男たちと台風で青函連絡船が…

「はじめての文学」よしもとばなな 

でも、たまにはいいこともあるさ 現代日本の文学を代表する、個性豊かな作家12名が、文学の入り口に立つ若い読者へ向けた中短篇の自選アンソロジー。 村上春樹 村上龍 よしもとばなな 宮本輝 宮部みゆき 浅田次郎 川上弘美 小川洋子 重松清 桐野夏生 山田…

バウンド 1996年

女二人に翻弄される一人の男 アメリカ ウォシャウスキー兄弟監督 5年の刑期を終えて出所してきた女泥棒コーキーはアパートの部屋の改装と排水管工事をしていた。壁が薄くて隣室の音や話し声が聞こえてくる。隣室はマフィアのシーザーと情婦ヴァイオレットが…

蝋人形の館 2005年

人形はいつしか魂をもつ アメリカ、オーストラリア、ジャウム・コレット=セラ監督 女性2人、男性4人の若者がフットボールの試合を観戦するために2台の車でスタジアムに向かう。 途中でキャンプをするが、朝になると一台の車のファンベルトが切られており…

心の旅路 1942年 

ハッピーでなければエンドじゃない アメリカ マーヴィン・ルロイ監督 1917年、フランス戦線で記憶を失った英国陸軍大尉がメイブリッジ精神病院に収容されていた。1918年秋、戦争が終わった霧の深い夜、彼は病院を抜け出す。そして偶然ダンサーのポー…

ローズ 1979年

ロックは不滅だ アメリカ マーク・ライデル監督 ベトナム戦争で揺れる60年代のアメリカ、ジャニス・ジョプリンをモデルにしたロックシンガー、ローズの歌と愛に命をかけた破滅的な人生を描く。 ローズは疲れ切っていた。そして酒、セックス、ドラッグに溺…

緊急事態宣言解除後の風景

ショッピングモールはほとんどの店舗が再開して人出は徐々に増えてきた。カフェや飲食店にもけっこう客が入っている。近くのテニスコートでは朝からプレイをしている。ゲートボールも同様。 スーパー銭湯や温泉施設(検温あり)は普段よりは少ないがある程度…

激怒 1936年

この国が失ったもの アメリカ フリッツ・ラング監督 1936年、ジョー・ウィルソンと婚約者のキャサリンは結婚資金をやっと貯める事ができて、ジョーはキャサリンの住む町まで車で出かける。 ところが途中で、誘拐犯と間違われ留置場に入れられてしまう。…

あなただけ今晩は 1963年

原題は「かわいいイルマ」 アメリカ、ビリー・ワイルダー監督 パリの中央市場近くのカサノバ通り、そこは娼婦街だった。何人もの娼婦たちが客待ちで街路に立っている。そのなかにプードルを連れたイルマがいた。娼婦たちのヒモが酒場にたむろしていた。警察…

木を植えた男 1987年

絵を描き続ける男 カナダ、フレドリック・バック監督 30分 「私」と名乗る若い男が語り手となってこの物語は始まる。 1913年、南フランスの山岳地方、寒々とした荒れ果てた土地を「私」は歩いていく。その荒れ果てた土地に住む人々は生活の苦しさから…

彼女が消えた浜辺 2009年

映画で貴重な異文化体験 イラン アスガー・ファルハディ監督 オープニング、狭い郵便ポスト口に次々と郵便物が入れられる。光のささない部屋からそれを見ている私たち・・閉じ込められているのか。 セビデーは友人3家族との三泊のバカンスに保育園の先生エ…

マイ・ブルーベリー・ナイツ 2007年

淡い夢をみているようだ 香港、フランス、ウォン・カーウァイ監督 ニューヨーク、高架電車の灯りがきらめいている。失恋したエリザベスはカフェ・クルーチのオーナー、ジェレミーと親しくなる。カフェでは捨てられない男と女の想いの詰まった鍵を預かってい…

山本周五郎の短編

江戸の町にタイムスリップ 自由がないというわけでもないが、どこか監視社会を思わせる息苦しい世の中になった。「正義の言葉」に気が滅入り、山本周五郎の短編を読み返した。 胸を切り裂かれるような哀しみや生きる力を与えてくれる人間賛歌に「真実の言葉…

狩人の夜 1955年

指に彫られた「Love」&「Hate」 アメリカ チャールズ・ロートン監督 1930年代、大恐慌の時代、ウェスト・ヴァージニア州の田舎町、ベンは銀行強盗で強奪した1万ドルを娘パールの人形の中に隠し、息子のジョンに在りかを絶対に誰にも話すなと告げた後、…

ゴッドファーザー PARTⅡ 1974年

ある視点から見たアメリカ現代史 アメリカ フランシス・フォード・コッポラ監督 1901年、イタリア、シチリア島から物語は始まる。ゴッドファーザーと呼ばれた父ビトー・コルレオーネの少年時代から、1958年、その息子で父の跡目を継いだマイケル・コ…

野いちご 1957年

「人との接触を断つ日々」にこの映画はどうだろう スウェーデン イングマール・ベルイマン監督 78歳の医師イーサク・ボルイの独白と悪夢で映画は始まる。「人との交流を意図的にさけてきた。だから年老いた今は孤独だ」 死が近づいてきたとき、人は過去を…

イン・ザ・ベッドルーム 2001年

予想を上回る出来栄え アメリカ トッド・フィールド監督 メイン州、漁業の町カムデン、夫マットは医師、妻ルースは教会の合唱団の指導をしている。18歳の一人息子フランクは建築を学んでいる大学生で夏の間、故郷に帰っていた。彼は年上の女性ナタリーを愛…

私の殺した男 1932年

ルビッチの感動ドラマ アメリカ、エルンスト・ルビッチ監督 2016年フランソワ・オゾン監督「婚約者の友人」としてリメイクされた。 第一次大戦後の1919年、パリ、フランス青年ポールは教会で神父に赦しを乞う。ポールは戦争中の西部戦線でドイツ兵を殺し、そ…

特別な一日 1977年

ソフィア・ローレンとマストロヤンニの二人芝居 イタリア、エットレ・スコーラ監督 1938年、ヒトラー総統がイタリアを訪問した。当時のニュース映像が延々と映し出される。翌日、ムッソリーニのファシスト党はローマで歓迎式典を開く。その様子がラジオ…

未知との遭遇(新型コロナウイルス)

いつの間にか季節が移っていた 太古の昔から人類は未知のウイルスに何度も遭遇してきた。「絶滅するのは人類か、ウイルスか」・・多くの人命は失われたが、生き残ったのは人類だった。 友人たちから近況を知らせるメールやウイルス関連の動画が送られてきた…

エル・スール 1983年

父はどのような一生を送ったのか スペイン、ビクトル・エリセ監督 暗い画面の右隅に少し光がさしている。部屋の窓からほのかな朝陽が差し込んでくる。外では犬が吠えている。部屋はだんだん明るくなり、母のあわただしい声が聞こえ、ベッドで眠っている少女…

奇蹟のシンフォニー 2007年

世界は音楽で満ちている アメリカ、カーステン・シェリダン監督 養護施設で育った11歳のエヴァンは音楽の才能にあふれた少年だった。風の音やチャイムや鳥のさえずりなどあらゆる音を聴き分ける鋭い感性を持った神童だった。 まだ会ったことのない父と母を…

街角 桃色の店 1940年

人情喜劇の香りもする アメリカ、エルンスト・ルビッチ監督 原作はハンガリーの劇作家ミクローシュ・ラースローの戯曲 ハンガリーのブダペスト、街角の雑貨店マトチェック商会、そこの優秀な主任であるクラリックは見知らぬ女性と文通をしていた。仕事を求め…

四川のうた 2008年

抒情的でノスタルジックな感動作 中国、日本、ジャ・ジャンクー監督 「三国志」の舞台となった四川省、成都、2007年、巨大な国営の機密工場である「420工場」が50年の歴史を終えて、取り壊される。そこは映画館もプールも中学校もある独立した一つ…

街の野獣 1950年

追われる人生 アメリカ、ジュールス・ダッシン監督 客引きのハリーは一攫千金を夢見る小悪党だった。夜のロンドン、借金取りに追われ、路地を逃げ回るハリーの姿から映画は始まる。 恋人のメアリーに真面目に働くように言われても、ハリーは聞き入れずとにか…

新型コロナウイルス

欲しいのは小さな希望 先の見えない閉塞感と錯綜する情報に人びとが不安になり、うろたえている。 私のまわりにもトイレットペーパーや食料品を買占める人や、感染を怖れて5階の部屋に閉じこもる人や、何度も手洗いを繰り返す人がいる。 私は多少の不便はあ…

誰かがあなたを愛してる

ニューヨークのいちばん美しい季節 1987年、香港、メイベル・チャン監督 演劇の勉強のために23歳のジェニファーは香港からニューヨークにやってきた。迎えに来たのは遠縁のサンパンだった。サンパンはギャンブルと喧嘩と酒に明け暮れるヤクザな33歳…

僕たちは希望という名の列車に乗った

沈黙する教室 2018年、ドイツ ラース・クラウメ監督 1956年、「ベルリンの壁」ができる5年前、東ドイツのスターリンシュタット、18歳の高校生テオとクルトは、西ドイツの映画館でソ連に対して自由を求めたハンガリーの民衆蜂起のニュース映像をみ…

A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー

時の過ぎゆくままに 2017年、アメリカ、デヴィッド・ロウリー監督 妻と夫の会話から物語は始まる。妻が「子どもの頃、引っ越しが多かったわ、メモを書いてそれを小さく折りたたんで隠した。そうすればいつか戻って来た時に、昔の私に会える」と言う。「…

わたしの「青い山脈」

♪若く明るい 歌声に・・♪ 私もほんの数回しか見たことがないが、とても晴れた日、ごくまれに六甲山系が青く霞んで見える時がある。だから私は六甲山系が「青い山脈」だと思っている。 六甲山系の摩耶山から海の彼方を見ると、淡路島や大阪や和歌山が近くに見…